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ユカポンの翻訳奮闘記

★ユカポンのプロフィール
投資会社の事務職を経てフリーランスの映像翻訳者に転向。
字幕ソフトSSTを武器に、字幕翻訳、スポッティング、英文字幕、邦画の日本語字幕まで手がける翻訳界のオールラウンドプレーヤー。
早く言えば、お仕事のえり好みは10年早い新米です。
最近は吹替えの勉強も始めました。
学生時代以来の濫読と、マニアな知人たちのウンチク拝聴の年月が、今とても役に立っています。

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第四十五回「特典の楽しみ」

劇場公開中の映画のDVD用特典の仕事が早々と来る時もありますが、古い映画をお化粧直ししたDVD用特典の仕事が来る時もあります。

数年~20年ぐらい前のヒット作は大変なオタクなサイトがよくあって、かなり怖いです。コメンタリーは楽屋落ちも多いし。マニアなファンに怒られないよう気を使い、ウケそうな表現を入れようと七転八倒… 

もっと古い映画は評価が定まっている分、安心です。意外な楽しみ:息の長い俳優の若き日を見られるかも:もあります。なんか見たような顔・聞いたような声がクレジットを見て「あら!」自分の父親のように老ける人もいるけど、赤の他人になる人もいて面白い。イカレた皇帝が名探偵に出世したのは、侯爵がギャングだったのと同じぐらいビックリでした。

美女は50年後に見ても美女ですが、美男の傾向はずいぶん変わった。大人と言えば聞こえはいいけど、ヒーローがオジサンだ・・・それも渋い大人の魅力で売る役じゃなくて、真剣に青年の役。今見るとキビシイ。

もちろん美女の条件も結構変わりました。仕事ではないけどモンローの映画で、お腹ポコンのタイトスカート姿にギョッ。でも相手役の男性に幅と奥行きがあるため並ぶと可憐でセーフ。たぶん男が30代初め女が20代後半の設定と思うけど、プラス10歳ぐらいに見えました。でも。

婚期に遅れかけても結婚相手に妥協はしない、というラブコメの粗筋は、プラス10歳でも今なら使えそう。若くなったというより、幼稚化?


第四十四回「エコライフなんて夢です」

冷房を切って汗をたらしながらお仕事してたら、PCに怒られました。(ガーッ。ガガーッ:えーかげんにせーよ、32度だろうが、冷房入れい)はい、去年なだめてすかして長らえさせたノートPCです。えーだって扇風機の風で結構快適よ。(ガガガガーッ:暑い!壊れる!)はいはい、分かりました。昼休みにアイスノンでお昼寝させたげる。

冷却板というのを買ってPCの下に敷き、それも熱くなってくると底面の冷却ファンのあたりを持ち上げ、ティッシュの箱に斜めに立てかけて、扇風機の風が通るようにしてやります。キーボードが斜めになって打ちやすいけど、気をつけないと滑ってドスン!大工仕事の得意な人間にPC用の書見台を作ってもらえばいいのか。今度、設計図を考えよう。

うわー34度。都内でサバイバルする高齢者とPC様のため、冷房全開。でもトイレが40度近い…

そういう時に限って、図書館に行かないと無理系の仕事が来ます。去年も貸し出し続出の本を求めて図書館をハシゴし、熱中症になりかけた。おかげで区内数ヶ所の図書館に近い駐車場には詳しくなりました。エコじゃないけど、倒れるよりマシ。買うより安く宅配より早い。ガソリン?タクシー代より安いですぅ。

映像作品のユーザーは冷暖房の効いた部屋で楽しむんだから、作業する人間が冷房と車使いまくりで何が悪い。映像ビジネスはそもそもエコとは無縁よぉぉぉ。なんだか人間も論理回路がイカレてきたみたい。私もお昼寝しよう。

第四十三回「省略と補足」

しばらくぶりにドキュメンタリー、歴史ものが来て楽しかったけれど、
ちょっとショックでした。私的には学校で習った歴史というよりテレビや新聞、講演やルポ本、現場にいた人まで介した記憶だったからです。そりゃあ20年30年も前ですけどさ。

自分のトシを意識するショックもありますが、情報処理が結構、大胆なことも衝撃でした。大きなテーマに直接関係ないことは、バシバシ切ったり、簡略化したり。そんなあっさり片付けちゃう?話題の飛躍が強引じゃ?欧米では常識?日本じゃ通じない。うわあ、字数が無理!もっと省略しなきゃ。それで意味通じる?別ハコで補足しないとじゃ?

関係者がまだ健在だったりするから、探せば資料書籍はかなり詳しいのが入手できます。自分の記憶と詳しい資料と、番組の大胆なカットの間でクラクラしながら進みました。

歴史はもともと矛盾が多いのです。歴史書を書いた人が立場次第で情報を取捨選択しているから本当に真実かの検証が必要かつ難しい。都合のいい事実だけを並べることだって可能ですからね。情報の多い現代史は反対材料も多くて大議論の最中だったりする。EUの共通歴史教科書を作る時も各国の学者同士が、あわやつかみ合いの場面もあったそうです。

でも一般的には、歴史は真実を丸覚えする学科と思われている。偉そうに断言する方がいいみたい。なんとなく分かった気にさせればいいよ、とアドバイスされてはいますが、省略と補足に悩んだ仕事でした。

第四十二回「お仕事は前倒しで」

家族が入院して、ちょっとした家庭内危機の最中にミニシリーズの注文が来ました。ううーん。断るのはもったいない面白そうな仕事、しかもけっこう好きな分野です。1本1本は短いので締め切りもきつくはない。よし、やるぞ。早起きして少しやる。病院やその行き返りでもプリントアウトでチェックする。なんとかなるぞっと。

4日で1本のペースでどうかと当初聞かれたのが頭に残っていました。実際の締め切りはもっと余裕があったのにうっかりして、1本目を納品、2本目を納品しようという時に気がつきました。2本目の納品日と思い込んでいたのが、1本目の締め切り日。あらら。

せっかくなので少し手元に置いて余分に見直ししましたが、自分も持病で病院通いがあります。待ち時間のプリント・チェックはなかなか有効な時間だから、そこまでの作業を考えると、3本目を始めた方がいい。前倒し前倒しで、だいたい1本早く出すペースに乗れました。

中年になると、結構な緊急事態がしょっちゅう起こります。病気に葬祭、子供がいる人は学校関係の突発事態もあるかも。でも受けた仕事を途中で投げることはしたくない。どんなに正当な理由があっても、やっぱり信用問題ですもの。前倒しで進めておけば、いざという時あわてません。

実際、睡眠時間を削ることもなく、効率もスピードも上がったようです。外出が増えて、強制的にメリハリがついたのがいいのかもしれません。来週は病院帰りにインディを見に行こう♪

第四十一回「これも格差?」

6月のお楽しみ、ホワイトアスパラ目当てに知人と食事に行った席です。相手は専門職で英語堪能、海外出張も先方から(話が早いから)ご指名を受ける人。BS/CSもよく見ていて、字幕なぞ必要ないくせにミス探しが好きというヤなヤツですが、指摘は鋭い。問題は靴の値段でした。

高価な靴が台無しだと怒る場面だったそうです。1000ドルもした、とわめいているのに字幕は“5万円もした”。レートも変ですが、
「5万円の紳士靴なんてフツーじゃん」うーん。私ら、バブル経験者。
「シケた訳ぅと思って、シラケた」あんたが今も景気いいだけでは?

でも靴だけは、というダンディーなサラリーマンもいます。チョイ悪の必須アイテムだし大事に手入れすれば結局は安いのも確か。そう思えば5万円の靴は決して高くない…

「そりゃ金銭感覚は幅があるけど、“高かったのに!”でいいじゃん?」
そうだね。無難な訳だよね。でも、役柄は?パリっと決めてるけど実は成り上がりって人物なら…
「いや、フツーに高給取りのエリートっぽかった。だから違和感だよ」
1000ドルどころか、20万円以上って既製品もあるもんね。

「お気に入りの靴を汚されて怒るのは分かるよ。けど、たかが既製品。その値段をまず叫ぶあたり… ま、しょせん、ヤンキー・エリートか」
あんたの勤務先、本社NYじゃ?出張中の放言は、相手を選びなさいよ。
「大丈夫、仲がいいのはインド人と中国人だから。WASPは落ち目だよ」

でも豪華なドラマでも、メインの視聴者は庶民なんだよ…

第四十回「開いてヤっちゃいます」

“言葉を開く”とは標準的な表記を外れて工夫することと心得ます。私がよくやるのは“ひと言”や“ひと目”などです。漢字だと2通りに読める読み方を決めるのと、フォントや前後の文字の並び方によっては漢数字の一やニが(ー)や(=)と紛らわしいですからね。

字幕はパッと見て分かりやすいことが命なので、視覚的な見栄えも大事。漢字と仮名が適度に混じる文が理想です。

その昔に流行った小説で、カタカナだけの電文が何ページも続くギャグ場面がありました。大笑いしたけど、とても全部読む気になれず、電文の内容はとうとう未確認です。でも字幕は読みにくいから読まないでは困ります。

漢字を並べるのは原則5文字まで、6文字以上並ぶと情報量が多すぎて認識しにくいとか。でも“警視庁特捜部”などよく見る組み合わせならサッと頭に入るからOK。“超・法規的措置”とか、“財務省 大臣官房”など、中点や半角を使うのも読みやすいです。

“モテる”“デキる”など、わざとカタカナを混ぜる表記もあります。本来は読みやすくするためですが、あまり乱用しないほうがよさそう。どうしても軽く&下品ぽくなるので、人物の色にぴったりでない限り、シリアスな作品では嫌われることもあります。大胆な表記を使ったら、おとなしい代案も考えておくと無難です。(やっちゃっていいですか)と確認することもありますが、最後はセンスの問題かなあ…

第三十九回「豊かな貧しい言葉」

こちらがオバさんのせいでしょうが、若者向けの作品で、英語と自分で訳した日本語の両方にウンザリしたことがあります。チョー汚ねぇ…と、伝染性が高いのも恐ろしい。母親でなくてよかった。お仕事とはいえ、こんな言葉を操っていたら、子供を叱れないもんね。

幸か不幸かスラングは何語でも非常に簡単です。テレビやマンガ雑誌、スポーツ新聞などをちょっと見れば、感心しない言葉ほどすぐ覚えます。お下品系タレントやお笑い芸人の日本語は一応、放送基準クリアだから使えそう。

迷いはそれをどうはめていくか。頭が悪いのか育ちが悪いだけか。本当にガラが悪いのか、なんとなく使ってるだけか。人間観察なら年の功も有利なはずですが。

相当汚い言葉ではあっても、バラエティ豊かに繰り出される場合、いろいろ訳し分けると妙に利口な印象になってしまうこともあります。実際、俳優本人は頭が切れるのでしょうが、マジでおバカの役よねえ…?でも全部「ヤバイ」と「クソッ」では芸がないかも。

全体で“この程度のおバカ”“こんな感じのお下品”の度合いが合えば、1つ1つの悪態は正確を期さなくてもいいか。いいのよ。字幕の翻訳は逐次翻訳ではございませんもの。ただ、外したらひどいことになりそう。ガラは悪いけど頭はいい役との使い分けもあるし、なかなか調節しがいはあります。どういうつもりでBastardでShitでGod damnでHellなのか、よーく状況を見極めて…

汚い言葉に妙に強くなりそうで、コエーよ。

第三十八回「耳ダンボの独りよがり?」

ド新人のうちは翻訳仕事はほとんどドキュメンタリーでした。調べものの手間はかかりますが、字幕としてはやさしかった。と、今は思います。英語の内容を理解したら、明快な言葉で滑らかに響くよう言い直すだけ。複雑な概念を複数のハコで出しても“知りたい”人は全部読んでくれる。ドラマは話が違います。

単発ドラマ系の仕事を頂くようになった当初、よく注意されました。
「字幕というより吹替えみたいです。」
「暇だからテレビでも、と途中から見た人には何のこっちゃ?」
「英語が聞ける人には、よく分かりますけどねぇ・・・」

非英語の映画を字幕抜きで見ると納得ですが、言葉はチンプンカンプンでも、内容はかなり分かります。ここは言葉がないとムリ、という点を字幕にする。そうでした、字幕は黒子。お囃子や長唄にあたるBGMや演出効果と一緒に、主役の演技を応援するの。解説しちゃダメ。

ドラマの英語は易しいので、つい耳で訳して吹替え風になるようです。エクスポートしたデータだけ見て突っ込みを入れる感覚で修正しますが、スポッティングから何度も見てるから耳の記憶が足を引っ張るぅ。一晩寝かせた字幕テキストを再び確認し、音を消して流しみて、最後に音声付きで流して再再再…確認。どうかなあ。

自分では分かりきっていることほど、ちゃんと人に伝わるか、伝えすぎでうるさくないかどうかの判断は難しい。お客様相談室で苦労する気分に近いかもしれません。

第三十七回「なんちゃってイタリアン」

イタリア語でしゃべりまくる映像が来ました。基本になる英訳データも来ましたが、ハコ番号がない。どこで切れるのか、よくわかりません。英語字幕入りの映像は遅れていて入荷予定は納品2日前。どうしよう。

とりあえず粗訳しておけば作業が早いかも。とりあえず、音声を頼りにイタリア語を切って慣れておこう。あら、今、バンビーノって言った?スタシオーネ?マエストロ?ローマ。マリア。ミネストローネ!

フッ・・・いけそうです。固有名詞と意味の分かるイタリア語、ラテン語起源の英単語。英文を見ながら耳で分かる単語を拾えば、切ったハコがどの辺りか大体分かります。リライトの要領で訳せそう。

全然分からないハコも多かったのですが、分かるところから埋めて空白のハコに英文のキリのいいところを割り振って、やったぁ完成!これぞ名づけて、なんちゃってイタリアン翻訳術!

表情豊かなイタリア人の話しっぷりでハコのリズムが取りやすかったおかげでしょう、後で届いた英語字幕と比べても9割がた正解でした♪ちゃんと学ぶと奥が深く大変という噂のイタリア語ですが、もしかして適性あるのかも。習ってみようかしら。

その次がスペイン語テキスト見ながらスポッティング?発注する方も大胆だけど、幸い音と表記の乖離感はさほどありません。目と耳で同時に追いやすい。やらせていただきます。うまい具合に時は春、テレビやラジオの語学講座のスタートで超入門編のテキストが数百円。ただいま予習中です。オラ!

第三十六回「ブログとナントカは使いよう」

リサーチで愛用してきた某検索エンジンの使い勝手が、最近悪くなっています。原因はブログ。官公庁か研究機関、企業、個人マニアサイト等、かなり信頼できた情報が、ド素人のおしゃべりに埋もれ始めています。「ブログ検索」より「ブログ抜き検索」させてくれ。なるべく専門的なキーワードを工夫して、より権威のありそうな情報を絞り込むしかありません。

でもブログのひと言で勘違いに気づき、専門情報につながることもあります。確定した訳語や表記がない時にも(一般的にxxが流布)の根拠にはなるでしょう。消費者アンケートから報告書に採用する意見や傾向を選ぶようなもの。正解ではなく統計データと思えば、使えます。

インターネットや検索機能自体は、優れた道具です。ただ当たった情報が本当に正しいかどうかの判断は人間任せ。文章で書き手を図ることもある程度は可能だと思いますが、情報の出所の確認は絶対に必要です。信頼しきれない時は訳を変えるか、代案を提示するのが無難でしょう。

苦労して調べたことほど記憶に残り、次のリサーチの叩き台になります。ついでに暇なときでも専門分野の本に当たると尚可。自分の好みで選ぶ本では絶対に得られない知識が、けっこう楽しく増えていきます。

前より妙なことに詳しくなったせいか、ブログ書けば?と言ってくれる知人もいますが、上記の理由でやらないと言っています。自分で自分のリサーチのジャマになったらイヤだもん。

第三十五回「早回し酔い」

特典の仕事でたまに“本編抜き”があります。特典に本編の映像や音声が挿入された場合、元の字幕と同じハコを切ることです。英語ベースの引用だから、字幕と違うところで切れて微調整が必要なこともありますが、あくまで本編の訳を尊重します。

本編や字幕データを提供されることもありますが、なければレンタルDVDで確認です。データをもらえない代わりに本編抜きはやらなくていい、という注文もあるのですが。

本編抜きがなくても、特典の仕事は本編も1度は見たほうが無難です。映画館で見ていても細部は忘れてるし、未見の作品は話が見えないこともある。固有名詞の表記確認にも、手元にDVDがあると便利です。

でも納期がきついか、シリーズものを数本見る必要がある場合は、ゆっくり見ている暇はなし。早回しスペシャル上映と相成ります。見たことがある映画でも、特定の台詞やシーンが「チャプター」情報で1発検索とは限りません。早送り・早戻し機能が大活躍です。

だいたい2倍速までは台詞も聞けるし字幕も読めます。4倍速だと聞くのは無理でも、筋を追う程度には読めます。(確か海辺のシーンだった)など視覚の記憶が頼りなら、8倍から20倍でガーッと回します。

古い映画は2~4倍速でちょうどいいテンポということもありますが。最近の映画、特にスペクタルな特撮やCGは、あまり長く早回しすると船酔いに似ためまいが… お仕事を頂く配給元の話題作は一通り見ておけ、ということですね。

第三十四回「営業活動」

営業について。あうう。全然やってません。たまに翻訳会社に顔を出し、お茶飲んでくるぐらい。あれは営業とは言わないか。

先輩翻訳者さんに伺ったことはあります。制作会社のトライアルを何社も受け、その問い合わせついでに仕事の状況を聞く。で、「何でもやりますから声をかけてください」とお願いし、小さな仕事からコツコツと。それで信用を積み重ね、やがて…と、ごく穏当な路線でした。

自分が事務屋だったから、通常の仕事で十分忙しい相手に飛び込み営業などもってのほか、は分かります。突撃すれば熱意が通じるなんてのはウソです。迷惑なだけ。営業で嫌われてどうする。それに翻訳者の商品は自分の腕と信用。ある程度実績がないと商品見本もありません。

モデル兼で稼いでいた英会話教師は自分のカタログを持っていました。基本の立ち姿に加え、さまざまな衣装や水着姿のポーズ。ヘアスタイルやメイクも変え、こんなイメージもあんなイメージも、というスタジオ写真と、実際に印刷されたポスターや広告のコピー、雑誌のページ等をきれいにスクラップ。いつ、どこで、誰と仕事したかの一覧表付きです。

こちとら写真は使えませんが(本編カットは著作権アウトでしょ?)、実績リストや自己紹介書を作るときプレゼンの工夫はできそうです。が。

あまり手を広げると自分の首を絞めるかも?キャパ・オーバーにご用心。失って分かる信用と健康、は泣くに泣けません。(まだ余裕あります♪)

第三十三回「背筋が寒い」

小春日和の日に始めた仕事が、進むにつれて画面が寒い。さぶそうな北の荒海の映像にブルブル…と思ったら、本当に寒冷前線襲来で締め切りまでガンガンに冷え込みました。まあ、冬ですから。

でも次に姿の見えない殺人鬼の仕事が来て、ホラーな山場で一服しようと茶の間に下りると「惨殺死体が数体転がっていて」の緊急ニュース。うへえ。その次が銃をバンバン撃ち合う映像です。乱射事件が起きたらどうしようと半分本気で心配しました。

怖いのは偶然のつながりというより、実際日本でもありうるからです。冬が寒いのと同じで、猟奇殺人や銃の乱射がもう絵空事じゃない。

逆に言えば、欧米、特にアメリカでは、ずぅっと現実に起きていたことだったわけでしょう?それを小説や映画にして娯楽のタネにしてきた。怖ろしい神経してると思うけど、それが人間でしょうか。慣れちゃう?
午下がりのサスペンス劇場再放送を見続けた結果、開始15分で犯人はだいたい分かる、というレベルの犯罪じゃないけど。本質は同じか?

犯罪映画が描く不況、貧困、失業、引きこもり、性格異常、教育の荒廃、虐待、いじめ、DV… ああもう、全部現代日本にゴロゴロある話じゃない。さすがに直接体験はないけれど、マスコミ報道だけじゃなく実話として伝え聞きます。どおりでほぼ毎日殺人事件の報道があるはずです。

以前は娯楽作として楽しめた作品が、今はリアルな恐怖を呼び起こす。せめて防犯対策のつもりで見ましょうか。

第三十二回「おいしい画像」

グルメ映画という分野はあるのでしょうか?ぱっと思い浮かぶだけで「料理長殿ご用心」「バベットの晩餐会」「リストランテの夜」ううん、なんておいしそう。「恋人たちの食卓」ああ、台湾で食い倒れてみたい!「ディナーラッシュ」「コックと泥棒、その妻と愛人」はエグイ場面も多かったけど、お料理はヨダレものでした。

そこまで料理がメインじゃなくても、ポンと出たお菓子や果物、パンの一切れ等がおいしそうで印象に残ることもあります。「アマデウス」でサリエリがつまむお菓子とか、おいしそうでしょ。

暮れに来た仕事でも、中流家庭のディナー場面で食卓の上の白い容器に目が留まりました。字幕上はただの「チーズ」ですが、音声をしっかりキャッチ。スティルトン。英国産ブルーチーズです。大好物!久しぶりに食べたいよう。

仕事が一段落して、お正月用品の買出しへ。スティルトンが頭から離れません。隣町の高級食料品店で輸入チーズコーナーを漁ったけど、ない。都心の大きなお店なら… でも年末でやることが山積みだし、既に酒瓶を含む荷物が重いのに、地下鉄に乗って人込みの中へ?ヤダ。妥協して手頃なチーズ盛り合わせパックを買いましたが。

年が明けてもまだ幻がちらついてます。通販は見つけたけど、イメージの容器入りじゃない。まさかチーズ200-300gのためにポンドが高い英国まで行けない。なにか別のおいしそうな映画を見た方がいいかも。

第三十一回「コツコツ」

この冬から英文ビジネス誌の定期購読を始めました。年間ン万円は高いけど、英語を錆付かせないためと思えば、英会話教室より安いでしょう。政治経済の今を論ずる英語は使えるはずだし、記事の朗読を聴ける権利付きだし、トリビア満載。映画やドラマの背景理解にも役立ちそうです。

クラックは麻薬の結晶を砕いた卸品=産直。貧困層は安いから買うのに所持量に関わらず売人とみなされる。パウダー状を買える客層は同じ量でも自分用と主張できて刑が軽い。(なるほど麻薬がらみの犯罪ドラマはリアルなほど格差の問題が絡むわけだ。)中国の地方がヤバイのは、デモや暴動のリーダーが兵役明けの若者たちだから。人民軍で訓練され、正義と規律を叩き込まれて帰郷したら、汚職蔓延で仕事がなく怒ってる。(ランボーの集団みたいなもんか。確かにヤバそう。)あれれ?

ほとんどの記事がスラスラ読めたのは驚きでした。お勤め時代は辞書を引き引き、何日もかかって読んだ雑誌なのに。

映像音声付きナマ英語にどっぷり漬かった数年の成果?同じフレーズでも映像で理解が深まったか。それに仕事だと知らない単語1つにも(ま、いいや)はなし。全部きっちり辞書を引いたり、背景を調べたりも効いたのかな。一語一語読むより、サーッと流して要点だけ日本語で出力する「字幕回路」ができたのかも。

(この単語、確か先週も引いたのに、なんでもう意味覚えてないかな)ということもよくあるけど、それでも継続は力みたいです。

第三十回「寒さこらえて・・・」

晩秋の数週間、プー。仕事がありません。年末前の一服の時期、脚本家組合のストの影響もあるのかな?こういうときは優雅な奥様よろしく平日に出歩くチャンスと思う方が精神衛生によろしい。芸術の秋です。毎日とはいきませんが、映画に展覧会にモーターショー。都心の新しいスポットも回りました。渋谷のクラブでハイヒールで踊り狂った翌日は目が覚めたら夕方。とうとう遊ぶ気力・体力、財力も乏しくなってきました。

寒い時、手頃な暇つぶしは編み物です。身内から“相続”や“生前贈与”で貯まった毛糸がひと山あります。セーター1枚できる分量がある毛糸は数年かけて、ほぼ使い切りました。残ったのは色とりどりの1玉2玉、せいぜい4玉。ミッソーニのような色彩センスがあれば上手に合わせて芸術品のセーターが作れるかもだけど・・・無理ですな。

ニット小物は今年流行のようだけど、小洒落た市販品が1000円ぐらいから。これでは毛糸を買い足して作るほど意欲がわきません。暇つぶしとはいえ、売ってないものを作らないと虚しいわ。

編み物本を引っ張り出して検討の結果、ソックスを編むことにしました。毛糸玉1つで1足できるので、配色に悩まずムダもなし。モコモコ暖か。冷え性の知人がもらうと言ってくれました。かかとの増減が複雑ですが、要領が分かったら2~3日で1足できるようになりました。

ソックスの山ができる前に、仕事が来るといいんですけど。お、電話!

第二十九回「トラウマのリライト」

お声がかかる以上は、できるはず。無茶そうでもやってみるが身上とはいえ、なんで私にフランス語の打診?もちろんリライトですけど。

韓流や台湾の俳優とか、ミュージシャンのインタビューのリライトなら経験あります。息継ぎだけを頼りにスポッティングして、全訳とTCを見ながら(ここはこう言ってるらしい)とハコに当てはめていきます。できあがりが日本語らしく全体の意味が合ってればいいのですが、単語が1つでも分かれば少しは安心です。

韓国や台湾のスターはポツポツ日本語も交えて話すから、わりと安心。英語リライトは納期が切迫&スラングだらけが多いけど、英語には違いないので、耳も働かせます。問題は日本市場を意識してない非英語素材。全訳にTC指定が入っても不安は残ります。きれいな全訳はハコに合うほど細かくないから大きくズレるかも。ひゃー。

フランス語は昔イヤイヤ習った初級未満。でも、しばらく聞くうちに耳が慣れました。不愉快な単語(発音に苦労とか、パリの同僚のふざけた言い訳を思い出すとか)が聞こえてきてトラウマでしたが、それで特定できたハコもありました。人生ムダはない。でも忘れたい。

最近フランス語とドイツ語は中国語に押され、東大でさえ第1外国語のクラスは編成できないと聞きました。つまり、できる人にはチャンス。追ってくる若いライバルは減るし、ベテランは年配でPC弱いと聞くし、長期展望があるのではないでしょうか。


第二十八回「「ロックシーン」


ロックファンというほどではないけど、ノリのいいメロディにパンチの効いたボーカル、ドラマな歌詞から映像が浮かぶような曲は好きです。でも、英語が聞き取れるようになったころから遠ざかりました。「極貧・怒り・ラブ命」はお給料が上がるほど他人事。たまに耳にするメロディは気に入っても、ド演歌に通じる世界はねえ。再会のきっかけは、最近元気な英国バンドです。

英語から派生した用語が多い洋楽系日本語は独特です。リスペクトするとかインスパイアされたとか言うな!派でしたが、仕事で音楽系映像を見るうち、(尊敬する・影響を受けた)と違うという感覚はつかみました。そこへ比較的耳が慣れてる英国北部訛りのロックバンド・インタビューがパタパタきて、売れ筋のバンド名をいくつか覚え、賞を取ったバンドの遊び心いっぱいの映像の仕事を頂いたんです。

発売されたDVDに一般人レビューの5つ星がつきました。もちろん元の映像の出来がいいのですが、このセンス最高!と机をバンバンたたきながら訳した英国新人バンドものが“ファン必見”♪ 以来、親近感でアルバム買ってます。面白い連中だと思ったら曲も好みでした。

先日は米国の新人バンドの映像にピンと来ました。息子世代のボクたちだけど、面白そうだぞ。渋谷のクラブのチケット取りました。「通」に言わせると、東京は世界へ売る新人を試す場だとか。ブレイクの予感を確かめに、生まれて初めてのクラブ、行ってきまーす。


第二十七回「文化祭」

DVD用特典の仕事が続きました。凝った作りの特典映像は字幕の位置に頭を使いますが、本編にトークを重ねたシンプルな音声解説はハコの取り方で迷います。トークだと訳すのは楽しいのですが、必ずしもプロのトークじゃないから、特に2~3人でワーワーやられると、IN点が問題なのです。

ドモる・うなる・突っ込む・割り込む・ハモるは当たり前。わめきあいでもはっきり聞こえるお笑いのプロは偉い。素人のわめきあいは訳分からん。スクリプトの記述も大混乱。でも、なんとかIN点を決めると、なぜかOUTにしたほうは聞こえなくなります。人間の耳ってよくできてます。

そんな多重ヒヤリングは学生のノリと同じ、と同窓会で気づきました。大勢が好きなことをワーワー言い合ってて、そのとき一番面白い話題に全員がサッと乗って入ってくる。監督やスタッフによるメイキング裏話が中心ですが、俳優のゴシップや笑い話もあります。文化祭の打ち上げみたい。そういえば、映画作りは壮大な文化祭かもしれません。なんだかんだと苦労の話でも、コメンテイターたちは楽しそうです。

2枚目の汚れ役やタフガイのおバカ役は見るだけで楽しいですが、人柄や役者根性のゴシップを聞くとなお面白い。俳優を見る目が変わることもあります。別の出演作品も見てみようかと思うもの。ハハーン、これも映画会社の戦略かな。便利なように訳しとこ。映画のタイトルが出てきたら、なんとかどこかにねじ込むぞ、と。

第二十六回「いいオタク・悪いオタク」

古い日本映画の仕事をしたとき、自分がいかに古い人間か認識しました。70年ごろのCMソングや歌謡曲どころか、戦前の流行歌も知ってた。モー娘を振りつきで歌える団塊の営業マンに思いっきり「古いねえ」と言われたわけです。

古さを見込まれたか米軍の戦時映像が飛び込んできました。「硫黄島」の余波?でも、この地名知らない。戦前のことなら詳しい友人に電話。「xx島って聞いたことある?」「**基地があったとこ。ほれ、♪…」「ストップ。それ知ってるし、夜中に軍歌歌うな。お隣に誤解されるよ。」

詳しく聞いてると長くなるので、自力で背景をチェックしようと図書館に行きました。ヒェェ。軍事関係の棚に並ぶタイトルのすごさときたら、一見の価値あり。役に立ちそうな本を探すにも腰が引けます。マニア臭プンプンの図鑑を借りるのは勇気がいります。好きで読むんじゃありません!仕事で必要なだけです!と目で訴えたけど、若いお嬢さん司書は目をそらした。気がします。

家に帰って細かい用語や年月日の確認などしていると、あらま。びりっと破り取った後が歴然と分かる。目次と照合すると当時の戦闘機の注釈入りイラスト数ページらしい。その裏に見たかった年表があったのに。図書館の本を破るって、どういう?ポスター代わりに部屋に張ったか?そんなに好きなら自腹切って買え!

それより返却するときのお嬢さん司書の目が怖いよう。私じゃないって信じてくれるかしら。

第二十五回「サイズの謎」

素材の難易度や納期にもよりますが、最初に完成したMDBファイルを初稿とすると、納品するのは第5から第10稿ぐらいでしょうか。1日寝かして見直すと更にいいハコになるものですが、近頃もう1つ目安にしていることがあります。それがMDBファイルのサイズです。

作業を進めながらセーブするたび、MDBのサイズは増えていきます。一通り作業を終えると1時間800ハコで700KBぐらいか。数回手直しする間はほぼ横ばいです。それがある時ドンと落ちる。1メガを超えたファイルも300KBを割るぐらい縮みます。すると内容的にも完成度が高いみたいです。更に修正すると多少増えることもあるけど、1度小さくなったファイルに400KBという数字はまず出ません。

なにか技術的な理由があるはずですが、解明に至ってません。台本欄に文字を入れるとサイズが上がるのは確かだけど、それを消しただけではそこまで大きく落ちない。見直し用のテキストファイルをエクスポートしても、元データが消えるわけじゃなし、これも原因じゃないでしょう。上書きセーブの回数が問題?修正履歴を溜め込んでる?だったら、なぜそれが消えるの??

とにかく、ファイルサイズがドンと落ちたかどうか、は完成度の目安になってます。サイズが大きいままのファイルは見落としありの黄信号。ああ、まだKBが減らないよう。もう1回チェックしなくちゃ。

第二十四回「お買い物」

残暑でノートPCが熱中症になりました。ガーガーとイビキ?をかき、ポインタがヒクヒクと画面上でケイレンして作業ができません。電源を落とし、ひっくり返して熱々の底面に大きな保冷剤を載せてみました。1時間後戻ると室温36度でもPCヒンヤリ、立ち上げ快調。とはいえ。

いきなりダウンする前に予算や性能の見当をつけておこうと、いよいよ新製品の下見に行きました。近所の大型量販店なら車でいけるから残暑でも大丈夫。細かな消耗品を仕入れてから2時間ほど遊んできました。

定番商品に関しては昔からケチですが(通常価格の65%でゲット!)。容量が所有品の倍で値段が3分の1のフラッシュメモリーなどお手ごろ価格(ケチじゃん)の便利グッズにフラフラ、フラフラ。幼稚園のころ通った駄菓子屋みたい。買わない・買わない・買っちゃダメ。あ。安い。

予定外のお買い上げ品はノイズカットのヘッドセット。本来はスカイプのインカムですが、なかなかよろしい。なによりイチキュッパが可愛い。消耗品で計上OKだもんね。前から欲しかったのですが、本格的なのは数万円するのであきらめてたもの。これで夏祭りや盆踊り、選挙のたびキリキリせずに済む。地元行事はともかく、選挙カーには何か投げたくなりますから。(ハコが切れん!)

肝心のPCは、郊外型量販店で売ってるものはどうも仕事向きではない。涼しくなったら専門店巡りか。とりあえず保冷剤で冷やしてあげるから、頑張ってちょうだいよ…

第二十三回「ファビュラスな参考書」

調べ物にネットを活用してはいますが、ある分野の体系的にまとまった情報となると、やはり事典や専門書が頼りになります。でも、素人には何万円もする決定版は買いにくい。懐も痛いけど読みこなせないとムダですもんね。その分野に詳しい人に推薦を頼んだり、レビューや書評を見たりで、値段と内容が手ごろなものを探します。

今後も出番がありそうと思った数千円の本を数種類買いました。自動車、金融・会計、英・ラテン対訳など。すごく高かったり絶版になっていたりの場合は近所の図書館の在庫も調べます。

新聞の書評もこまめに見るようにしています。単なる流行本だと書評で用が済むこともある。逆に評判の本をネットで買うとハズレもあるから、パラパラめくってチェックする書店行きもやめられません。

ネット書店で入手した参考本最大のヒットはまだ出番がありませんが、読み物として傑作でした。「How to say fabulous」海外旅行用8ヶ国語会話集ですが、なんと英語圏のオネエ仕様。日本旅行の分しか理解できないけど、これがすごい。目からウロコの世界と語彙が広がりました。女性なら応用できそうなお買い物フレーズ多数も魅力・・・かな??

ただいま購入検討中は英語版の聖書。店頭検討予定は団塊ジュニア男子の生態本。児童書のヒット作も続々と映画化が決まってるからチェック。と思ったら、ハードカバーしかないんですね。図書館は夏休みで軒並み貸し出し中。友人の子供に借りようかな。

第二十二回「役者が違う」

なぜかシェイクスピアづいてる今年、勢いと成り行きで当日券ゲットの「NINAGAWA十二夜」大当たり。

シェイクスピア独特の長セリフも、歌舞伎の台詞回しだとかえって無理がなく、スッと頭に入ります。ダレやすいところも義太夫の状況説明でさっさと進み、人物や小道具の置き換えが憎いです。西洋の公爵さまは年末年始に恋わずらいでお国は大丈夫?ですが、左大臣なら年中無休で恋狂い問題なし。原作より有利かも。

なんたって男女の「取り替えばや」が歌舞伎の所作で120%生かされる。昨今は可愛い顔だから女と言い切れないけど、内股と男歩きの切り替えで少女の男装と一目瞭然。りりしく挨拶した直後にお酒を頂く所作だけお姫さまで場内爆笑。しかも男装の少女と2役の兄の動きが違う。これ、西洋劇ではなかなか出せない味でしょう。

当たり前だけど見事に歌舞伎です。1人2役早変わり。豪華絢爛な舞台装置。日本舞踊は踊りも見事ですがストーリーにもぴったり。恋に悩む左大臣が憂さ晴らしに歌舞音曲を楽しむ様子は源氏物語の絵巻みたい。

コミカルなサイドストーリーもお座敷芸+バラエティ風味で爆笑の渦。ロイヤル・シェイクスピアでも所作1つでここまで笑いは起きないなあ。特にすごかったのはダジャレです。高齢の奥様たちもププッと吹き出す分かりやすいゴロあわせは、普通なら寒いオヤジギャグ。それが間合いがいいのか素直に笑える。こういうのを役者が違うと言うんでしょうね。


第二十一回「カルチャーギャップ」

最近、新聞雑誌の広告は厳しくて、と広告営業の仕事をする知人に聞きました。広告媒体は映像が最強。テレビに加えネットのCMもあるし、企業の業績報告でも短編映画を使うところがあるとか。

何度か頂いた企業系の仕事は、その進化形らしい。ハリウッドの国だけあって、米企業のさりげない宣伝映画はドキュメンタリーかと見まがうデキです。けど、和訳でときどき悩みました。

一部エリートの使う言葉が、なぜだか妙にワンパターン。社会的地位も教育もある人たちの語彙が貧困なはずはないのに、同じ単語を繰り返し使う傾向があります。庶民をナメてる?語りかける目線も少々変です。

どう変か?さむい政見放送か、怪しい新興宗教の教祖みたい。気色悪さを抑えた日本語になるよう調整したけど、それじゃ本来の雰囲気は薄くなる。用途が日本人社員の研修用か、投資家向けかにもよるけど、この変さ加減って、実は本人はポイントのつもりでは?でも字幕は抑えないとまずいよねえ。無難にしとこう。でも本人はウケるつもりなんだから、無難すぎてもなあ。宣伝だからパンチも欲しい。うーん、調整が難しい。

そんな話をしたら、某米社東京支社の知人が言いました。毎春送られてくる本社会長の訓示ビデオは最高。ふき出さずに見るのが苦しい。英語が苦手な同僚も交え全員で笑えるよう、うちのが行ったら調整しない裏バージョンも作ってね。いや、それ、会長さんの意図じゃないでしょ。

第二十回「ホラーとサスペンス」

テレビ・劇場とも、娯楽映画には怖い系が少なくありません。ホラーにサスペンス、超常現象、こわーい未来。仕事で、映像をフレーム単位で刻んで見ると、パッと出るから怖いものが怖くなくなったりしますけど。

春先から変なお天気が続いたころ、数本続けて幽霊や悪魔とお付き合いして、そのたび結構怖い思いをしました。お天気のいい昼間、フンフンと鼻歌まじりにSST作業中、(悪魔とは・・・)なんてハコを切りかけたとたん、パッと日差しが暗くなり、ヒューヒューと変な風が吹き始め、ドーン!と遠雷、いや、近い!学校帰りの子供たちの悲鳴が響き、音を立てて雨が降り出す中、稲妻が走るわ突風は吹くわ・・・

さっさとセーブ&バックアップ、スタンドバイしてコンセントを抜いて、お茶にしました。そう、一番怖いのはPCに雷の直撃を食らうことです。避雷針に落ちたって一瞬で家の配線からコンセントを通じてPCに高圧電流が流れます。と、技術者に脅かされたので、とにかくコンセントを抜く。雷が止むまで休憩の時間が惜しいぐらい納期がきついと困りますが、幸い悪魔たちはそこまで祟りませんでした。

1度納品間近でPCが死んだ事件があってから、こまめにバックアップを取り、予備のPCも1台確保してはありますが、古い型だからなあ。バッテリーだけで数時間持つ、という新型ノートを見に行くべきかも。
XPは残り少ない分、すごい割安デスクトップがあったし。迷います。

第十九回「なんて読む?」

画面に出る英語のテロップを和訳の字幕に切るとき、珍しい人名地名で往生することがあります。音声を切ったハコなら音から起こすか、固有名詞を出さない訳にする手もありますが、テロップはなんとしてもカタカナ表記しないといけません。英語読みか仏語読み、いやドイツ語かなと迷う名詞も多いし、東欧・アジア・中近東、アフリカ系となると、発音の見当もつかないスペルもあります。MP画像がボヤけてaだかuだか?というときに限って、スクリプトにも載ってないし(涙)

朝日やNHKの手引き、辞書にもある程度の人名地名のカタカナ表記が載っていますが、人名で重宝するのは映画・書店・音楽サイトの検索機能。
本人情報がベストですが、同じスペルの俳優や歌手、和訳本のある作家が見つかればしめたもの♪地名は日本語版の観光案内か海外転勤用の情報サイトで探すか、書店で詳細な観光ガイドをパラパラ(あれば買う)。

それでダメなら総合検索サイト。官公庁や研究機関、大企業の報告書か論文、付録の地図等なら信用度高し。裏技は適当なローマ字読みで検索すること。間違いを指摘するマニアの書き込みから正しい発音・表記にたどり着くこともあるのです。もちろん、さらにその裏を取ります。

もう1つの裏技はスクリプトのチェックです。テロップと離れた場所にポンと音声が出てくることもありますから。発音が訛ってて遠回りしたこともあったけど…とにかく、手がかりにはなります。

第十八回「ディープ!」

映画では、全ての観客の完全な理解は求めない作品もあります。あえて特殊な用語や過激な表現を使ったり、重い問題の正解を示さずにあなたならどうすると問いかけてみたり。明白すぎない=カルト・ムービーの条件みたいなムードもあるな。見ている分にはフーンですが、翻訳となると、それもコメンタリーとなると、あーうーえーおー。だあああ。

そういう映画を作った人たちは言いたいことが山ほどあるらしく、喋るしゃべるシャベル。頼むから息継ぎして。言葉を選ぶあまりに単語1つずつ話さないで。オマケに内容が難しい。本編よりずうっとディープ。ど、どうしよう。「必ずしも配給会社の見解ではない」等のお断りつきでも、そのまんま日本語にするとキテル感じになりそう…だけど。

カルト系のDVDを買う人は、たぶんマニアか多少はマニアの気がある。下手な手心加えると逆にブーイングか。これで知識を蓄え、一緒に映画を見るカノジョの尊敬を得ようという人もいたりして。ディープ&正確でないと割高な特別版は買ってくれない…?

そこで目指すはプチ・オタク系言語です。“オッパイお化け”(©悪友の娘)大好きなアキバ系ではなくて、かなり知識はあるけど専門家も一目置くマニアまではいかない人。あれあれ、専門職系うんちく君の趣味談義!

彼らの熱弁をイメージすればディープな香りの日本語になるはずです。自分だってオタクでは、という内心の疑問は深く考えないことにして、負けるもんか、それらしく訳してやるぞぉ!

第十七回「スクリプト、ありません」

1度だけ、納期が切迫した「スクリプトなし、ハコ書き不要、1分」の仕事をしました。正直苦手なストリート系の早口で“英語に聞こえる”まで50回は聴いたかな。現実にこの手の発音が聞こえたら、ササッとその場から逃げたいし。ところが聞こえてきたのは驚くほどインテリな発言でした。先入観、禁物。

ほとんどの注文にはハコ書きの土台になるスクリプトが付いてきます。でも「ん?」「んん?」と聴き入ることあり。実際の映像から聞こえる音と違うからです。たいてい間違いというより微妙に違う程度ですが、Inの基点がumかsoかyeahかandかHeか。ハコ切りでは大きな差です。You knowやand thenやI should sayが抜けていたり、I, I, I thinkとドモって1秒=4文字違えば大問題。言質を捉えて嫁いびりする小姑のように耳を澄まします。

完璧なスクリプトはこれまで1本のみ(兄弟がいなくてよかったかも)。アニメの台本でした。アドリブが許されないか、子供向けのチェックが特に厳しいのでしょうか。カメラ馴れしていない人のドモリや口癖まで取らない原則でテープを起こしているのかもしれない。訛りがすごくてネイティブ同士でも聞きもらす可能性もあるだろうし。

最終的に正しい音を拾うのはハコ切りする者の責任と思うと、耳に力が入ります。言葉を聞き取るというより音を察知する感じ。結局OUTということも多いのですが、訳のニュアンスが変わることはありますね。

第十六回「翻訳ミュージカル」

4月中に2本、翻訳版ミュージカルを見ました。意図したわけではないのですが、シリアスとコメディ、ロングランと初舞台、ベテランと新顔、主な観客の年齢層などなど対照的でした。でも共通点もあります。まず自然体で歌ってること。四季や宝塚のような独特のクセがない。

でも英語の詩に合うよう作られたメロディに日本語の歌詞を乗せるのはすごく難しそうです。残念ながら聞き取りにくいところがありました。特に観客の年齢層が高い舞台は、細かな筋が飲み込めなくて帰りにブツクサ言う人も。字幕でフォローしないぶん、訳詩(歌詞)の責任は重そうです。

翻訳より大胆に翻案するのがいいみたい。原意より状況と自然さ優先。聞きやすい音の言葉を使い、音楽的にも同じに響くようA音で引っ張るところは日本語もA音で引っ張るとか、サビの聞かせどころもピタリと合わせ… うわあ、大変そう。歌って踊れる人がやらないと無理か?

一方で聞かせる歌、観客をグッとつかむ歌も。歌手のキャリアがある人はさすがだわ。声量、表現力、華。デュエット相手によっては気の毒なぐらい違う。歌詞の日本語が聞こえる聞こえないは、歌唱力の差もありそう。ダンスは輸入ものと遜色ないレベルに見えたし、歌える人は演技もいける。どんどん実力派歌手を使わないのはギャラが高すぎるから?性格的にワンマンショーになるとか?そういえば、出演していた歌手全員性格マルのイメージが強かったような・・・?

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