過去ログ 第十一~十五回
第十五回「なまってますけど?」
ときどき強烈に訛った英語に遭遇します。外国語訛り、ネイティブ方言、ガラの悪いストリート語。スクリプトと並べてやっと英語と認識できたぐらいすごいのもあります。“らしい”日本語に料理したいけど…
バカっぽいミュージシャンのインタビューで「つーかさ 俺としちゃヨ」は“やりすぎ”でNGでした。バカっぽいのは見れば分かると言われ、「つまり俺の考えでは」に修正。偏差値がだいぶ上がった気もするけど。某アジアスターには“上品かつ大人っぽく”の指定がついたから、営業上の配慮もあるかな?
言葉の訛りは、移民や社会階級、教育程度など微妙な問題をはらむこともあります。登場人物がみな同じ話し方なら無視できるけど、誰の英語がきれいで誰の英語が崩れてるか、他の人がそれを気にしているかどうか、訳出でけっこう気を使うポイントです。「Californiaと言ってみろ」とシュワちゃんを挑発して選挙に敗れた人もいた国じゃ特に、触らぬ神にタタリなし、が基本かも。
もちろん訛り自体が重要なら話はまた別です。『マイ・フェア・レディ』のように発音自体が鍵になる場合や、訛りで人の背景を強調するなら、和訳にも加工が必要でしょう。そのために傍点やカタカナを混ぜた表記(「すンばらシー」とか)には先例もあり、すんなり通りました。
字数制限のせいもあり、訛り加工には限界があります。それでも訛りに人間関係のツボが見えたら…口調でいじっちゃお♪(またやりすぎ?)
第十四回「うつるんです」
これまで頂いたお仕事はたぶん9割以上が米国発エンターティメント系です。内容的には硬派なものもあったけど、ビジネス英語よりずっと生の話し言葉、それもくだけたライト調が主流でした。でも今年は企業系やブリティッシュなご縁もチラホラ。昨年末のボヤキが天に届いたか?
ボヤキのきっかけはクリスマス・カードの準備でした。海外の知人宛てに約200ワードの近況報告を練っていてふと、(なんか軽い)(妙に軽い)(これって気安くしすぎ)でも直しても直しても、なんか軽いんです。昔お世話になった元上司にまでタメ口きいているような英文になってしまう。どうしてって、そりゃ今の仕事のせいでしょう…
…って、これじゃその昔、私のつたない英文をみっちり赤ペン添削してくれた英国紳士に怒られるよう! おカタい経済誌でも読むべきかな?と相談した友人に笑い飛ばされました。(報告書で必ず1か所は笑いを取れ、と言った人でしょ?)いや、ウケるスタイルが違うんだってばさ!
そしたら企業PR系やブリッツ英語の仕事とか、シェイクスピア劇へのお誘いも来始めたのです。これでかのジェントルマンも眉をひそめない…かな?不安。どう考えても、仕事はライトな米語が圧倒的に多いはず。んん?としつこく聞き直すから、うつるんだわ。手っ取り早い中和剤はBBCニュース?でも、米口語を聴く耳ももっと磨かないとだし…
まあ、「英語を聞き続ける学習法」は、確かに効き目があるようです。
第十三回「その1Fが長すぎる」
丁寧にスポッティングしたつもりでも、なかなか1回で完璧とはいきません。In点のずれ、カットのこぼれ、いつも最低30―40箇所は見直しで修正します。特に難しいのが歌詞のOut点です。基本は台詞と同じく、音の切れ目に気持ち遅れてふわりと落ちるように。ところがメロディとリズムがつくだけで、なぜこう決まらないの?台詞のOut点が1―2回で決まるところ、歌詞は5―6回は見直します。
音楽で強調されるせいか歌詞のハコのアラは目立ちます。極端な話、1F長くてもヘン。まして、そこにカット変わりが入ると悩むまいことか。ゆったり伸ばすとモタモタするし、短いとスパン!とギロチンが降ってくるみたい。さあ、長か短か、どっちだ!
どうも18Fぐらいまでは思い切り短く納めたほうが残像効果のせいできれい…かな?でも曲のテンポやBPMにもよるし「ジャジャン!」や「パッパラー」の有無でも違う。ハコ1つ見るのと曲全体で見るのでも違うし、たちの悪いことに何度か見るうち印象が変わることもあります。じっくり歌を聞かせる場面か、音楽でテンションを上げていく場面か、感覚的に分かってくるからでしょう。納得するまでひたすら流してみるしかないから、ときには時間との闘いになります。
手間も時間も余分にかかる歌詞ハコですが、決まったときの気持ちよさも格別です。繰り返し見るから歌もしっかり覚えます。ただし見ているのは訳詞なので、英語の歌詞は覚えませんが。
第十二回「らららミュージカル!」
「シカゴ」来日公演を見てきました。映画版を見直して日が浅かったので耳に余裕があったから、つい一緒に歌って(声は出しません)客席に呼びかけてくる場面では大きく腕も振っちゃった(結構お調子者)。
幕が開く10分ぐらい前から軽やかなサックスが聞こえて、生演奏?!と驚きましたが、ジャズバンドがドーンと出現。女子刑務所長がすごい声量で聴かせるし、弁護士役もリチャード・ギアよりぐっと若く、硬派セクシーな華あり、さすがロックバンド出身。女囚の色仕掛けが取引というより純粋にいい男だから言い寄ったように見えます。影の薄い夫はなぜ倒れない?というユラユラ・ダンスがすごい。踊るスペースが狭いのでアクロバティックなダンスがウリのヴェルマが割食った・・・ いや、舞台はロキシーが主役なんだわ。Wヒロインでゼタ・ジョーンズの勝ち、という映画公開当時の評価に今ごろ納得。それにしても、この設定だととうに亡くなった祖母より年上か。感慨深し。
しかし舞台脇の電光字幕は見づらい。2階席だったし(休憩中あわててオペラグラス借りる人あり)、生演奏に合わせるのも難しそうですが、なにより設置場所が悪いと思います。舞台脇の字幕を読んでいると中央の俳優の動きを見逃しそう。でも毒の利いた台詞に活きのいい訳が出てたから、無視はもったいなくて目が泳ぐ。俳優と一緒に視野に入るよう、フットライトあたりに横下で出してくれませんかね。
第十一回「だんだん難しく」
最近、字幕位置が一定しない洋画が増えたことにお気づきでしょうか?
話している人物の真下にコンパクトな字幕が出ます。ワイドスクリーンの左右にいる人物が掛け合いすると字幕も右・左・右。誰が話しているのか分かりやすいけど、字幕を作る側の立場になると手間が大変そう。
先日DVD特典で、きっちり作りこまれたメイキング&インタビューの仕事がありました。進行役が話し続け、時おり本編の場面が挟まれる中、あちこちに小ウィンドウが開くわ、地図が出るわ、文字解説が出るわ。英語をサッと読めて聞ければワクワクの内容なんだけど、字幕をどこに置けば邪魔にならない?? 結局、空いてる左右上下縦横に動かして、なかなか美しく仕上がりましたが、その手間ときたら・・・(涙)
また、特に音楽プロモ系では奇抜で実験的な映像も少なくありません。音声+テロップが2つだったら?マンガみたいに書き文字が躍ったら?音声が2重に流れたら?重なった情報のどれかを捨てる。言うは易しで毎回うなってます。映像の面白さが壊れないか、捨てた情報が後の場面の伏線でないか、情報過多でうるさくないか。何パターンか作ってみて比較し、決めきらないと最後はクライアントにお伺いを立てます。でも納期が延びるわけではないので、“プロジェクト管理”も厳しくなるぅ。
基本ルール枠外の映像表現が増えているようで、だんだん難しくなってきました。その分、こちらの判断力も進化してるといいんですが。

