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翻訳の現場から


2020.03.11

風間先生の翻訳コラム

コラム第63回:クラゲの群れに刺されたら

クラゲの群れに刺されたら

 先日やった作品内でクイズが出てきた。What’s the name for a group of jellies? この場合のjelly(jellies)とはjellyfishのこと。つまりクラゲだ。だからクイズを訳せば「クラゲの集団の名前を何と言う?」となる。だが問題はその答えだ。A smack――辞書を引くと、同音異義語(?)が5つ並んでいる。1つめは「~の味、風味」「~風、~気味」「一口、少量」という意味。これは違うと思い2つめを見ると「ピシャリという平手打ち」「舌鼓」「チュッと音を立てるキス」とある。残り3つ特殊な漁船の名前、ヘロイン(の一服)、口語で地獄のこと……どれもクラゲと関係がない。スペルミスかと思って改めて音声を聞くが、やはりsmackと言っているようだ。これは困った。
辞書がダメならインターネットだ。smackを調べても埒が明かないので、jellyfish, smackで検索をかけると、いくつかヒットしてきた。その中でズバリ「なぜクラゲの集団をsmackと呼ぶのか?」というタイトルの動画が挙がっている。話している女性はドクターとあるから科学者らしい。内容を簡単に言うと「生物の集団は変わった呼ばれ方をすることが多く、クラゲはsmackと呼ぶ。でも科学者はsmackとは呼ばずにswarmを使う」とのこと。どうやらクラゲの集団をsmackと呼ぶのは事実らしい。swarmとは虫や鳥など小動物の群れのことだから納得だが、なぜsmackと言うのか、なぜ辞書に載っていないのかが分からない。
それと動画では気になることを言っていた。「生物の集団は変わった呼ばれ方をすることが多く」に続けて具体例としてcrow/カラスを挙げているのだが、a murder of crowsと聞こえる。ヒアリングが正しければ“カラスの殺人”だ。murderに「群れ」なんて意味はないぞ。ますます疑問符が頭の中に増えていく。
その後、ページをいくつか見ていくうちに、だんだんと話が見えてきた。生物の集合名詞には一般的に使うものと別に、変わった言い方があるのだ。それは1つの生物に限った言い方で、その生物の特徴に関わるイメージ、言葉遊びのようなものらしい。大抵は日本の辞書に載っていないが、英語圏の人たちにはおなじみなようだ。こう書いてもピンとこないでしょうが、具体例を見れば納得します!以下、前に生物名、後に集合名詞と本来の意味を並べます。

crow(カラス)―― murder(殺人)
lizard(トカゲ)―― lounge(ラウンジ)
butterfly(チョウ)―― flutter(羽ばたき)
flamingo(フラミンゴ)―― flamboyance(けばけばしさ、派手さ、華麗さ)

例えば「カラスの群れ」と言う場合はa murder of crowsとなり、集合名詞の前には冠詞のaを置き、生物は必ずcrowsと複数になる。
黒いカラスが群れている不穏な感じから「殺人」、トカゲの「ラウンジ」はよく分からないが、金持ち女性を目当てにバーやホテルのラウンジにたむろする女たらし、遊び人のことをlounge lizardと呼ぶので、ここから来たのかも。lounge自体には「ぶらぶらして時間を過ごす」という意味もある。チョウやフラミンゴは文字どおりだ。
そして問題のクラゲは刺された時の刺激からということらしい。上述の2つめの「平手打ち」辺りから来ているようだ。クラゲの群れは正式にはswarmかbloomを使うのだが、変わった言い方としてsmackを使うことが知られていて、よくクイズにもなるのだそうだ。ちなみに本来の「群れ」を意味する言葉はherd、flock、pod、swarm、bloom、などがある。大まかに大きさや生物の種類などで使い分けるが、日本人には難しい。
意味が分かったのはいいが「クラゲの集団を何と呼ぶ?/スマック」では通じない。「群れ」では当たり前すぎてクイズにならない。もう意訳するしかないぞ。「クラゲに刺された時のたとえは?/平手打ち」むむむ…… 皆さんも考えてみてください。

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