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翻訳の現場から


2020.08.25

風間先生の翻訳コラム

コラム第68回:高周波は長いか短いか

 今回の話題は,人によってはあまり興味を持てないかもしれない。ただ、自分の中ではなるほどと思った事柄なので書いてみよう。ある作品でhigh frequency direction finderというのが出てきた。話の前後から、相手の無線を傍受して、その位置を割り出す装置のようだ。仮訳で「高周波方向探知機」とやってみる。さらに、もしや定訳があるかとネット検索すると、出てきました――出てきたのはいいのだが「短波方向探知機」となっているではないか。複数のページを確認したが、どれも「短波」だ。軍艦や航空機に積まれて、敵の居場所を割り出す装置らしい。HF/DFと略されたり、頭文字から「ハフダフ」と呼んだりする。どうも「短波」で確定のようだ。
 しかしである。frequencyとは「周波数」のことで、highが付くのだから「高周波」でいいはず。確認のためランダムハウスでhigh frequencyを引くと、ちゃんと「高周波」とあるではないか!ところが少し下に目をやると、第3義で「短波」とある。これは一体どういうことだろう?
 そこで、まず「高周波」という言葉について調べてみる。高周波とは電波や音波などのうち、比較的周波数の高いものを指す。だから「高周波」なわけだが、これがなぜ「短波」になるのか?それには無線工学の話をしなくてはならない。無線工学の世界では、高周波とは「無線周波数」のことを指す。無線周波数とは無線通信に使われる周波数のこと。この無線周波数は英語でradio frequencyと言い、これを日本では「高周波」と訳しているのだ。無線に使う電波は周波数が高いから、高周波と言うわけですね。どこから高周波というかの明確な定義はない。ただし日本では一般的に、電波管理局への届け出が必要な10キロヘルツ以上を高周波とすることが多いようだ。
 そして高周波は周波数によって分類されている。低い順に超長波、長波、中波、短波…と続く。問題は英語だ。長波はlow frequency(超長波はvery low~)、中波はmedium frequency、そして短波がhigh frequencyと言うのだ!なぜこうなるかといえば、英語は周波数の高い低いで名づけているのに対し、日本語は波長の長さで名づけているからだ(説明が長くなるので「周波数」「波長」については自分で調べてください!)。
 ちなみに中波とは主にAMラジオ放送用に使われているもの。短波は中波よりも遠くに伝わるので、遠洋の船舶通信やアマチュア無線などに利用される。短波の上は超短波といい、FMラジオ放送用に使われている。さらにその上の極超短波は携帯電話や地上デジタルTV、さらには電子レンジにも利用されている。
 だから無線周波数(電波)以外では、high frequencyを「高周波」と訳して構わない――というか無線周波数も周波数の高い電波という意味でhigh frequencyと使ってはいるんですね。言葉の印象で高周波=「高い」に対して短波=「短い」だから真逆のような印象を受けるが、冷静に考えれば「高い」の反対語は「低い」、すなわち低周波だ。上述のように英語と日本語では基本としているのが周波数と波長。つまり高い/低いと長い/短いで、そもそも別の話をしているわけですね。
 翻訳における対応としては、例えば電流だったら「高周波電流」などと使える。無線周波数の話をしている時のみ、訳語に気をつければいいわけだ。ちなみに冒頭のHF/DFだが、英辞郎では「高周波方向探知機」となっている――そう、分かります。そうやりたくなるよね。でもこれは間違い。注意したい。

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