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翻訳の現場から


2020.10.07

風間先生の翻訳コラム

コラム第70回:信仰に基づく映画

信仰に基づく映画

フェイス・ベースド ダメ男ふたりが人生で一発逆転する方法
©2020 Faith Based Production,LLC.
配給:イオンエンターテイメント
10月9日(金)公開

 間もなく公開される「フェイス・ベースド ダメ男ふたりが人生で一発逆転する方法」は長い副題でも分かるとおり、幼なじみのさえない2人組が,クリスチャン映画を作って一儲けしようと企むことで巻き起こるドタバタを描いたコメディだ。主演で脚本も担当したルーク・バーネットは、複数のインタビューで本作のアイデアについて語っている。ルークは高校時代にバンドをやっていたが、バンド仲間の友人で非常に才能のある男がいた。成功するだろうと思っていたのだが,結局は鳴かず飛ばずで終わる。ところがその数年後に会うと、友人はクリスチャン・バンドとしてその種のフェスティバルや教会、大学などを回り、結構な額を稼いでいたのだ。
 ここでクリスチャン・ミュージックについて少し説明したい。これはいわゆる教会音楽やゴスペルとは違い、ポピュラー音楽に信仰やイエスについての歌詞を乗せた音楽を指す。このジャンルがすごいのはヘヴィメタルやパンクロック、ヒップホップのバンド,グループも存在することだ。歌詞が分からない日本人には普通のバンドと一見して違いが分からない。
 話を戻すが、ルークが言いたいのは、友人が成功のためにクリスチャン・バンドに鞍替えしたということだ。実際、クリスチャン・バンドの半数近くはクリスチャンでなかったり、神を信じていないメンバーが多くいるという。そして、この辺の事情はクリスチャン映画でも同様らしい。
 クリスチャン映画というのは、文字どおり信仰をテーマとした映画のこと。有名なところではケンドリック兄弟の一連の作品がある。兄のアレックスが監督、弟のスティーヴンがプロデューサーを務め、兄弟で作品を制作している。また、このような作品に積極的に出る俳優もいる。その多くは本人が熱心なクリスチャンであることが多い。このことは本作内でも言及されるのでチェックしていただきたい。どれも実在の作品、実在の俳優だ。ただしルーク(これは役名の方!)に映画作りをさせるきっかけになった作品と、映画制作の指南で訪問した制作会社“クライストフリックス”の一連の作品はパロディです。ご注意を。もちろんこの制作会社もパロディ――名前を見れば分かりますね。
 ルーク・バーネットはクリスチャン映画について次のように語っている。彼はきちんとした作品もあると断ったうえで、映画としての質に問題があったり、いい映画を作ろう、いいストーリーを伝えようという気がない作品も多いと言う。さらに、それらの作品を無条件で見に行く観客の問題も指摘する。クリスチャン関係のものということで、クリスチャンは批判することなく質の高くない作品も支援してしまうのだ。加えてクリスチャン映画のプロデューサーや監督の中には、信仰心を持たず、作品の内容より興行収入のみに関心がある人間もいると言う。これではクリスチャン版エクスプロイテーション映画ではないか!
 このことは本作内でもセリフとして言及される。だが「フェイス・ベースド」はこういったクリスチャン映画の状況をサタイアとして描きながら、それはあくまで背景にすぎない。これは親友2人のバディ・コメディであり、彼らが時に間違い,迷いながら、認められたい,成功したいともがく姿をコメディ・タッチで描いている。有名スターこそ出演していないが、テレビ映画の刑事役で有名なギョロ目の長身黒人俳優ランス・レディックの他に「となりのサインフェルド」で知られるジェイソン・アレクサンダー、コメディアンのマーガレット・チョーなどの曲者がそろった渋い作品だ。決して大作ではないのだが、大作並みに日米同時公開というのも笑えるではないか。機会があれば、ぜひ劇場へどうぞ。

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