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翻訳の現場から


2015.12.01

風間先生の翻訳コラム

コラム第12回:クリア!

クリア!

銃をかざし部屋に飛び込み、室内を調べて敵が潜んでいないか確認する。誰もいないと分かると大声で叫ぶ――「クリア!」 刑事ものなどでお馴染みの光景だ。英語ではもちろん"Clear!" 室内に敵はいない、異状なしという意味で使われる。以前は「異状なし」「室内確保」などと状況に応じて訳したが、今では「クリア」でそのまま通るようになった。

もうひとつ「クリア」といえば、病室などでよく聞くアレだ。心臓が止まった患者に対して医者が機械を手にして電気ショックを与える。その前に「クリア!」と叫ぶのはこれもよく見る場面。

あの機械は除細動器 defibrillator という。駅や公共施設などに設置されているAEDのDですね。ちなみに電気ショックというのは、今はやられなくなったらしいが精神病などに行う治療のことで、除細動器の方は「カウンターショック」というのが正しいらしい。ただ、医者のブログでも「電気ショック」と使っているのを見たことがあるから、一般用語として使うのは問題ないだろう。

それにしても、電気ショックの場合は何が「クリア」なのだろう。これまで意味まで考えたことがなかった。調べてみるとありましたよ。AEDの使い方を中心にネット上でもたくさん説明がある。「クリア」とは、自分が患者の体と触れていないと確認するセリフ。電気ショックはかなり高圧の電気を使うので、自分や周囲の人間に流れたら感電してしまうから。

映画等では「クリア」しか言わないように思えるが、正しくはI'm clear! You are clear! (Oxygen's clear!) Everybody's clear! と言うようだ。 まずは自分が患者と触れていないかを確認、次に目の前の人=呼吸管理をしている人が離れているかを確認、最後に周囲の人全員が離れているかを確認する。( )の文句については「酸素を離してください」とか「バックバルブマスクを持って離れてください」などと言うらしい。高濃度の酸素が存在する状況で電気ショックを行うと火花が引火する可能性があるからだそうだ。ただし、気管挿管された人工呼吸中の場合は、周囲の酸素濃度は上昇しないので問題ない。もちろん、ショックでチューブが外れたら危ないわけだが。

つまりは指さし確認みたいなものだったわけですね。これから映画で電気ショックのシーンが出てきたら、ひと味違った見方ができる……とは言いませんが、こんな回り道をしてみるのもたまには楽しいかも。僕らの世界では調べ物をしても字幕に生かせないことが多い。せめてムダと思える行為を面白がらないとね。

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