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翻訳の現場から


2016.03.12

風間先生の翻訳コラム

コラム第15回:ホットなものをちょうだい

ホットなものをちょうだい

大ヒットとなった「オデッセイ」だが、映画を見た友人からなぜ劇中歌の訳詞を入れないのかと訊かれた。他にも数人から似たようなことを言われたので、今日は訳詞について書いてみよう。結論から言うと権利関係で既存曲の訳詞は入れられないからだ。昔は訳詞を入れるのは自由だった。歌詞がストーリーと関わると思ったら翻訳者判断で訳詞を入れていた――もちろん自分で訳したものだ。ただし、セリフと音楽が被っている場合は、どんなに歌詞が場面と絡んでいてもセリフを優先させざるを得ない。泣く泣く訳詞を諦めたものだ。その後、訳詞は基本的に入れられなくなった。僕の場合、2006年頃から訳詞を入れないでくれと言われた記憶がある。

さて、「オデッセイ」は火星に1人取り残された宇宙飛行士マーク・ワトニーのサバイバル物語だが、このマークが非常に前向きで明るい。それを補完しているのがディスコ音楽だ。映画では女性船長が70年代ディスコのファンで、彼女が個人的に持ってきていた音楽データをマークが見つけ、暇つぶしに聴いているという設定になっている。この劇中歌の歌詞がマークの心情やストーリーと見事にマッチしているのだ。いくつかを簡単に紹介してみよう。

今回、セリフにも絡むので特別に訳詞の許可が下りたのはドナ・サマーの「ホット・スタッフ」だ。"今夜はホットなものをちょうだい"というのは男女の微妙なやりとりのことだが、劇中では文字どおり「ホットなもの」に言及する場面で流れる。映画を見た方ならお分かりだろう。

食料を切り詰めなくてはならないマークが不満を言う場面ではテルマ・ヒューストンの「ドント・リーヴ・ミー・ディス・ウェイ」がかかる。"こんな形で私を置いていかないで、もう私は生きていけない"という内容の失恋ソングだが、マークの心情とうまくシンクロしている。

探査車で快調に移動する時に流れるのはデヴィッド・ボウイの「スターマン」だ。題名を聞いただけでピッタリと思える曲。"空でスターマンが待っている、本物のロックを教えてくれる"といった内容。恐らく監督も思い入れがあったのではないか。この曲のみほぼフルコーラスが使われている。映画の日本公開直前にボウイが亡くなったので、涙なしでは聴けない曲となった。

アバの「恋のウォータールー」は、マークがある決定的な行動を起こす場面でかかる。これは邦題がいけない。本当はワーテルローですね。"ワーテルローの戦いでナポレオンは降伏したけれど、私もあなたに降参よ、私はあなたと一緒にいる運命なの"というラブソング。

オージェイズの「ラヴ・トレイン」はエンディング近くで流れる。"世界中のみんな、愛の列車に乗ろう、ソ連の人も中国の人も乗って"という歌だ。ネタバレになるので場面は詳しく書かないが、よくぞ見つけてきたという感じ。  そして最後、エンドクレジットに流れるのがグロリア・ゲイナーの「恋のサバイバル」。これは原題だけで十分だろう。I will survive――私は生き抜いて見せる。まさに画竜点睛というところですな。

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